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気付かぬうちに『支援』と言う名の『憐みからの施し』が及ぼす悪影響②
ハラスメント
「憐みサポート」とは、一体何か。
相手の不幸や弱さに同情し、慈悲の心から「助けてあげたい」「救ってあげたい」という気持ちで差し伸べられる援助。単なる「かわいそう」という感情を超え、行動を伴う積極的なものです。
※「まだまだ、未熟だから言うことを聞いてあげよう」という気持ちで受けてしまっても、同じ結果になります。この場合は、憐みで聞いてあげたほうが、従う側となってしまいます
しかし、それは往々にして「自分よりも弱い立場にある人」への意識から行われます。ここに「憐みサポート」の核心があります。
つまり、「憐みサポート」は対等ではない関係性の上に成り立つものなのです。
同じ職場で働く仲間は、たとえキャリアや役割に違いがあっても、人としては対等です。彼らは救済の対象ではなく、互いを尊重し、補い合う存在であるべきです。 「憐みサポート」が一度行われると、その時点で関係性は対等ではなくなり、無意識のうちに主従関係が形成されてしまう――それが「憐みサポート」の本質なのです。
「主従関係」が引き起こす負の連鎖
一度「憐みサポート」によって『主従関係』が形成されると、支配する側には、指示や命令に従わない相手に対し、大きなストレスが生じます。このストレスは、無意識のうちに「もっと従わせたい、管理したい」という衝動的な心理状態へと高まります。
この心理は自覚されにくいものです。支配する側の「もっと従わせたい」「管理したい」という気持ちが募ると、相手が少しでも意に沿わない行動をとったり、状況が見えなかったりするだけで、無意識に「おまえごときが私の言うことを聞かないとは」という感情が湧き上がります。それが衝動的な強い口調、暴言へとつながり、場合によっては暴力に発展してしまうこともあります。
この状態こそが、まさにパワーハラスメントの本質と言えるでしょう(これはDVのメカニズムと共通しています)。
この一連の心理メカニズムは、驚くほど普遍的に発生します。これまで数多くのカウンセリングを通して、職場でパワハラ的な関わりを受けた方の悩みを聞いてきましたが、ほとんど例外なく、このエピソードが当てはまるのです。
「憐みサポート」がもたらす自己肯定感の低下と依存
一方、「憐みサポート」を受けてしまった側は、『主従関係』の中に置かれ、「自分はダメな人間だから、従うべきだ」という心理状態に陥ります。
厄介なのは、この「自分はダメな人間」という自己肯定感の低さが、特定の上司だけでなく、その人の日常生活全般に深刻な影響を及ぼすという点です。どんな場面でも自信が持てず、常に誰かに依存しなければ不安で仕方がない心理状態になってしまうのです。
このような自信の喪失は、未来への不安を常に引き連れてきます。 「もし~になったらどうしよう」 「周りに迷惑をかけるかもしれない、そうなったらどうしよう」
この自信のない心理状態は、さらに周囲からの「憐みサポート」を誘発し、悪循環が繰り返されます。結果として、お互いのストレスは増大し、体調や仕事にまで大きな悪影響を及ぼすことになるのです。
この悪循環から抜け出すために
この負の心理状態を解除するためには、まず「憐みサポート」の本質を理解することが不可欠です。理解することで、未然に防ぐための予防策を講じることができます。
しかし、もし既に「憐みサポート」を与えてしまったり、受け取ってしまったりしている場合は、以下の対処法が考えられます。
1. 「憐みサポート」を拒否し、受け取らない
これは非常に困難な選択です。自己肯定感が低下している場合、「自分が悪い」「言うことを聞かなければ」「怒られるのは自分が悪い」といった心理状態に陥りがちであり、「言うことを聞かない」という選択は非常に難しいからです。それでも自ら拒否をすることができた時、それは「憐み」という、自分が下に扱われていることに気づき、対等ではない関わりに疑問をいだくことができた時です。
2. 関係性から物理的に離れる
当事者同士では心理的な『主従関係』が強く根付いてしまい、自力で関係から離れることは困難な場合が多いです。しかし、物理的に距離を置くことで、その関係性の影響が和らぎ、客観的に状況を見つめ直すことができるようになります。ただし、物理的な距離だけでは『主従関係』が完全に解除されるわけではないため、自己肯定感は低いままで、再び別の「憐みサポート」を誘発してしまう可能性があります。
だからこそ、当事者だけでなく、周囲も「憐みサポート」のメカニズムを深く理解し、再発防止に努めることが不可欠です。 具体的には、従業員全員が「憐みサポートを与えない、受け取らない」という意識を持つことが重要です。
これを実践することで、企業全体として非常に安心で安全な職場環境を築き、持続可能な発展へと繋がることでしょう。
次回は、パワーハラスメントのメカニズムについてお伝えします
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